土. 1月 10th, 2026

あの日のことを、
私は今でも、はっきり覚えている。

応募ボタンの前で、
画面を何度も見つめていた。

募集内容は、もう何度も読んだ。
条件も確認した。
誤字がないかも、
送信前の文章を、もう一度なぞった。

それなのに、
指が動かなかった。

たった一回、
クリックするだけなのに。

部屋は静かなはずなのに、
心臓の音だけが、やけに大きく聞こえた。
マウスを握る手が、
少しだけ、震えていた。

大げさかもしれないけれど、
本当に、世界が止まったみたいだった。

もし、落ちたらどうしよう。
変な人だと思われたらどうしよう。
経験もないのに応募して、
笑われたらどうしよう。

不安が、
頭の中をぐるぐる回っていた。

それでも同時に、
別の声も、確かに聞こえていた。

このまま画面を閉じたら、
また同じ毎日に戻る。

調べて、
悩んで、
「そのうちやろう」と言いながら、
何も変わらない日々に。

そう思った瞬間、
不思議と、
少しだけ覚悟が決まった。

完璧じゃない。
自信も、ない。

それでも、
今の私なりに、書いた文章だった。

うまく見せようとするのをやめて、
正直な気持ちを、そのまま残した。

指先に、
ほんの少し力を入れて。

応募ボタンを、押した。

画面は、何も変わらなかった。
通知が鳴るわけでも、
何かが起こるわけでもない。

それでも、
私は確かに、一線を越えていた。

「考えているだけの人」から、
「動いた人」になった。

震えていた手は、
しばらく、止まらなかった。

でもその震えは、
怖さだけじゃなかった。

ちゃんと挑戦した自分への、
緊張と、
ほんの少しの誇らしさが、混ざっていた。

結果は、まだ分からない。
うまくいくかどうかも、分からない。

それでも、
この日の私は、
間違いなく、前に進んでいた。

あの震えは、
弱さじゃない。

勇気が、
動いた証拠だった。

投稿者 minatsu

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