正直に言うと、
「Zoom」と聞いた瞬間から、
もう怖かった。
画面越しとはいえ、
人と話す。
しかも、「仕事」の話をする。
想像しただけで、
心臓が落ち着かなくなった。
当日までの数日間、
頭の中では何度もシミュレーションを繰り返していた。
変なことを言わないかな。
質問されたら、ちゃんと答えられるかな。
パソコン操作、間違えないかな。
カメラが映った瞬間、
フリーズしたらどうしよう。
声が出なかったらどうしよう。
今思えば、
どうでもいいことまで、
全部が不安だった。
当日は、
落ち着かないまま時間が過ぎていった。
時計を見る回数が、
いつもより明らかに多かった。
針が進むたびに、
胸の奥が、きゅっと縮む。
開始五分前には、
もうパソコンの前に座っていた。
部屋は静かで、
聞こえるのは、
パソコンのファンの音と、自分の呼吸だけ。
画面に映る自分を見て、
急に恥ずかしくなった。
こんな顔で大丈夫かな。
表情、固くないかな。
カメラをオンにするかどうか、
その選択だけで、
何秒も迷った。
始まる前から、
もう十分、疲れていたと思う。
そして、
時間になった。
Zoomが起動して、
画面が切り替わった瞬間、
頭が、真っ白になった。
声、ちゃんと出てる?
表情、固まってない?
相手の話、聞けてる?
自分のことばかり気になって、
必死だった。
相槌を打つタイミングも、
目線の置き場も、
全部がぎこちなかった。
それでも、不思議なことに、
話が進むにつれて、
少しずつ、呼吸が戻ってきた。
相手は、
思っていたよりずっと普通で、
穏やかに話してくれた。
ちゃんと、
こちらの話を聞いてくれていた。
完璧に話せたわけじゃない。
言葉に詰まったところもあるし、
噛んだところもあった。
でも、
それでも、止められることはなかった。
会話は、ちゃんと続いた。
終わったあと、
椅子に深くもたれた。
体の力が、一気に抜けて、
どっと疲れが押し寄せた。
でも同時に、
胸の奥に、
小さな達成感が残っていた。
あんなに怖がっていたのに、
最後まで、ちゃんと参加できた。
それだけで、
今は、十分だった。
Zoomが怖かったんじゃない。
知らない世界に、
足を踏み入れること自体が、
怖かっただけだ。
でも私は、
ちゃんと、そこに立っていた。
震えながらでも、
逃げずに。
それって、
すごいことだと思った。