気づいたら、
ほんの小さな「できた」が、
少しずつ増えていた。
本当に、
気づいたら、だった。
最初は、
まったく見えていなかった。
私はずっと、
大きな結果ばかり探していたから。
収入とか、合格とか、
「分かりやすい変化」だけを、
無意識に追いかけていた。
だから、
あまりにも小さな変化は、
視界に入らなかった。
でも、ある日。
コーヒーを片手に、
何気なくパソコンを開いたとき、
ふと、思った。
――あれ。
前より、迷わずできてるかも。
副業のページを開く指が、
以前ほど震えていなかった。
開いた瞬間に、
閉じる準備をすることも、
もうなかった。
知らない言葉が出てきても、
反射的にブラウザを閉じず、
とりあえず、
少しだけ読み進めていた。
少し前の私なら、
不安が先に立って、
「やっぱ無理」って、
すぐ心を引き返していたところで。
今の私は、
ほんの一歩だけ、
先に進んでいた。
応募ボタンを押すのも、
説明文を読むのも、
怖い気持ちは、正直、変わらない。
胸は少し苦しくなるし、
心臓の音も、相変わらずうるさい。
でも、
「怖いからやらない」じゃなくて、
「怖いけど、やってみる」に、
少しずつ、
選択が変わってきていた。
それが、
私にとっての「できた」だった。
誰かに褒められることじゃない。
数字に残る成果でもない。
報告できるような、
派手な成長でもない。
でも、
確実に、
前の私にはできなかったこと。
最初は、
そんな小さな変化を、
自分で自分に認めるのが、
少し照れくさかった。
「こんなの、
できたって言っていいのかな」って。
たいしたことない気がして、
誰かに見せるほどじゃない気がして。
でも、
思い出した。
あの頃の私は、
その一歩すら、
踏み出せなかった。
ページを開くだけで精一杯で、
怖くて、
考えるだけで終わっていた。
だから今は、
ちゃんと「できた」って、
言うことにした。
自分にだけでいい。
小さな声でいい。
「今日は、前よりできた」って。
できたことを数えるようになったら、
不思議と、
「まだできてないこと」ばかり見ていた視線が、
少しずつ、
違う方向を向き始めた。
一気に自信がついたわけじゃない。
世界が変わったわけでもない。
それでも、
昨日より今日の私のほうが、
ほんの少し、
前を向いている。
それだけで、
十分だった。
小さな「できた」は、
音もなく、
派手さもなく、
静かに積み重なっていく。
そして気づいたとき、
私はもう、
スタート地点には立っていなかった。
知らないうちに、
ちゃんと、
歩き出していた。