土. 1月 10th, 2026

その画面を開いたのは、
ほんの出来心だった。

「ちょっとだけ見よう」
それだけのつもりだった。

スクールのコミュニティ。
投稿一覧。
次々と流れてくる言葉たち。

「無事に課題提出できました!」
「初案件、受注できました!」
「まだ慣れないけど、少しずつ楽しくなってきました」

明るい言葉に、
笑顔のアイコン。
前向きな空気。

それを見た瞬間、
胸の奥が、きゅっと縮んだ。

同じスクール。
同じスタート。
同じ「初心者」のはずなのに。

どうして、
こんなに違う場所にいるように見えるんだろう。

私はまだ、
課題のページを開いては閉じて、
「分からない」で止まっている。

なのに画面の向こうでは、
もう次の話をしている人たちがいる。

スピードが違う。
理解力が違う。
そもそも、土俵が違う気がした。

「私、場違いかも」

誰かに言われたわけじゃない。
比べろとも言われていない。

それなのに、
勝手に心が追いつかなくなる。

投稿をひとつ読むたびに、
自分の足元が、
少しずつ不安定になる。

「すごいな」
「頑張ってるんだな」

そう思いたいのに、
その後ろに、
必ず別の感情がついてくる。

――それに比べて、私は。

画面をスクロールする指が、
だんだん重くなる。

応援したい気持ちと、
見ていられない気持ちが、
同時に存在していた。

自分が嫌になる前に、
私はそっと、
画面を閉じた。

勢いよくじゃない。
乱暴でもない。

ただ、
静かに。

スマホを伏せて、
一度、深く息を吐く。

部屋は変わらず静かで、
誰も私を責めていない。

でも心の中では、
小さな嵐が起きていた。

できる人たちを見て、
落ち込んだ夜。

その事実が、
少し悔しかった。

「比べないって決めてたのに」
「またやってる」
そんなふうに、
自分にがっかりもした。

でもその夜、
私はもうひとつのことに気づいていた。

画面を閉じたのは、
逃げたからじゃない。

これ以上、
自分を削りたくなかったから。

前の私は、
落ち込むと分かっていても、
見続けて、
比べ続けて、
自分を傷つけていた。

でもこの夜は、
「今日はここまで」って、
ちゃんと引き返した。

それは、
とても小さな選択だったけど、
確かに、
自分を守る選択だった。

できる人たちは、
ちゃんと進んでいる。

それは事実。

でも、
できない私も、
ここで立ち止まりながら、
自分なりに進もうとしている。

同じ速度じゃなくていい。
同じ場所にいなくてもいい。

今は、
比べるより、
目の前を見るだけで精一杯だ。

画面を閉じたあと、
私はもう一度、
パソコンを開いた。

課題のページを、
ただ表示する。

それだけ。

できる人たちを見て、
そっと閉じた画面。

それは、
諦めた瞬間じゃない。

自分のペースに、
戻ってきた瞬間だった。

投稿者 minatsu

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