画面の前に座っていた。
いつもと同じ机、いつもと同じ椅子。
コーヒーはすでに冷めていて、部屋は静かだった。
オンラインスクールに申し込んだあの日から、
「ちゃんと選んだはずなのに、まだ怖い」という感覚が消えなかった。
進んでいるはずなのに、足元がふわふわしているような気がしていた。
その日、
私は「マイロードマップ」という言葉を前にして、
少しだけ呼吸を整えた。
正直に言えば、
未来のことを書くのは、ずっと怖かった。
うまくいかなかったらどうしよう。
途中で諦めたらどうしよう。
今ここで描いた未来が、
あとで「夢見すぎだった」と笑われる気がして。
だからこれまでは、
考えないようにしていた。
今の不安だけを見て、
今日できなかったことだけを数えていた。
でもその夜、
私は画面に向かって、
ゆっくりと言葉を打ち始めた。
「今の自分」
書き出してみると、
完璧じゃない自分が並んだ。
分からないことだらけで、
自信もなくて、
人と比べて落ち込みやすい。
それでも、
少し前の私とは違うことに気づいた。
パソコンを買った。
スクールに申し込んだ。
怖いまま、学び始めた。
やめたい夜があっても、完全には手放さなかった。
それらを言葉にしたとき、
「何もしていない私」では、もうなかった。
次に、
「思い描く未来」を書く欄があった。
ここで、指が止まった。
理想を書くなんて、
今の自分には早すぎる気がした。
叶うか分からない未来を言葉にするのは、
無責任な気もした。
それでも、
小さく、正直に書いた。
ゆとりのある安定した収入。
やりたいことを、自分で選べる働き方。
誰かに振り回されすぎず、
自分のペースで生きている自分。
派手じゃなくていい。
誰かに誇れるほどじゃなくていい。
ただ、
「今の生活がしんどい」だけの毎日から、
少し先に進んでいたい。
そう書いたとき、
胸の奥が、ほんの少しだけ温かくなった。
不安は消えていなかった。
「本当にできるのかな」という声も、まだあった。
それでも、
その画面の中には、
確かに「進みたい方向」があった。
全部がはっきり見えたわけじゃない。
遠くは、まだぼんやりしている。
でも、
どこにも向かっていなかった頃とは、明らかに違った。
私は、
初めて自分の人生を、
「他人事」じゃなく見ていた。
ワクワクしている自分がいることに、
少し驚いた。
こんな気持ちになる資格が、
自分にあるとは思っていなかったから。
でも同時に、
このワクワクは、
覚悟とセットなんだとも思った。
途中で投げ出すかもしれない。
思ったより時間がかかるかもしれない。
理想通りにならない日も、きっとある。
それでも、
「向かおうとしている自分」を
もう否定したくなかった。
ロードマップは、
完成図じゃなかった。
むしろ、
余白だらけだった。
でもその余白は、
諦めではなく、
これから埋めていくための場所だった。
画面を閉じる前、
私はふと気づいた。
怖さは、まだある。
不安も、消えていない。
それでも、
未来を思い浮かべたとき、
少しだけ、前を向いている自分がいた。
その変化だけで、
この日を選んでよかったと思えた。
成功は、まだ先。
結果も、まだ途中。
でも私は今、
自分の人生に、ちゃんと参加している。
その事実が、
この夜を、
忘れられないものにした。