朝は、容赦なくやってきた。
目覚ましが鳴って、
いつもと同じ天井を見上げて、
昨日と同じ時間に布団を抜け出す。
ロードマップを書いた夜の高揚は、
夢みたいに薄れていた。
部屋は変わらない。
机の上も、散らかったまま。
スマホには、新しい通知はない。
収入が増えたわけでも、
自信が湧いてきたわけでも、
世界が優しくなった気配もなかった。
正直、少し拍子抜けした。
あれだけ向き合って、
あれだけ言葉を選んで、
未来を書いたのに。
朝の私は、
また「何者でもない私」に戻っていた。
通勤の準備をしながら、
心の奥で、小さな声がささやく。
――ほらね。
――何も変わってないじゃない。
昨日のワクワクが、
気のせいだったみたいに思えてくる。
現実は、相変わらず重たくて、
今日やるべきことは、
副業とは関係ない用事ばかり。
理想の未来なんて、
この生活の中では、
遠すぎる夢のようだった。
それでも、不思議だった。
「やっぱり無理だ」と
全部を否定する気には、なれなかった。
心のどこかで、
昨日の夜の自分が、
まだ静かに立っている気がした。
コーヒーを淹れながら、
ぼんやりと考える。
ロードマップは、
魔法じゃない。
一晩で人生を変えるものでも、
翌朝を特別にしてくれるものでもない。
それはきっと、
地図というより、
方角みたいなものなんだと思った。
今いる場所は変わらない。
景色も、相変わらず同じ。
でも、
どっちに進もうとしているかだけは、
はっきりした。
それだけで、
昨日までとは、少し違う。
仕事に向かう道すがら、
いつもなら考えないことを考えていた。
今日は、帰ったら何をやろう。
完璧じゃなくていいから、
何か一つ、ロードマップに沿った行動をしよう。
ほんの小さな一歩でいい。
誰にも気づかれないくらいでいい。
「何も変わっていない朝」なのに、
私はもう、
完全に同じ場所には立っていなかった。
以前の私なら、
「変わっていない=失敗」だと思っていた。
でも今は、
変わっていなくても、
進み始めている途中だと思える。
ロードマップを書いたことで、
人生が楽になったわけじゃない。
不安が消えたわけでも、
迷いがなくなったわけでもない。
ただ、
「どこにも向かっていない不安」から、
「向かう途中の不安」に変わった。
それは、
思っていたよりも、
ずっと大きな違いだった。
現実は何も変わっていなかった。
それでも私は、
変わらない現実の中で、
昨日とは違う目線で立っていた。
そしてそれは、
静かだけど、
確かに始まっている合図だった。
次に変わるのは、
世界じゃない。
今日の、
私の選択だ。