理想は、いつも遠くにある。
ノートに書いた未来の私は、
もう少し余裕があって、
もう少し自分を信じていて、
画面の前で迷いなく手を動かしている。
でも現実の私は、
仕事を終えて帰ってきて、
鞄を置いて、
少しだけため息をつく。
疲れている。
正直、今日は何もしたくない。
ソファに座ってスマホを開けば、
何もしなくても時間は過ぎていく。
今日くらい、休んでもいいんじゃないか。
また明日、ちゃんとやればいい。
そんな言い訳が、
自然に頭に浮かぶ。
理想の自分と、
今の自分の距離を考えると、
その差に、少しだけ気持ちが重くなる。
――こんな少しの作業で、意味あるのかな。
――全然進んでない気がする。
それでも私は、
パソコンを開いた。
大きな理由があったわけじゃない。
やる気が溢れていたわけでもない。
ただ、
「何もしない自分」には戻りたくなかった。
画面が立ち上がるまでの数秒間、
心臓が少しだけ速くなる。
今日は何をしよう。
ロードマップを見る。
本当は、もっと進みたい項目がある。
でも、
今日の私には重すぎる気がした。
だから、
一番小さな作業を選んだ。
動画を一本見る。
分からない言葉を一つ調べる。
メモを、三行だけ書く。
それだけ。
誰にも褒められないし、
成果として見えるものでもない。
それでも、
キーボードに触れて、
少しだけ頭を使って、
「副業のための時間」を過ごした。
途中で、
集中が切れて、
画面を見つめたまま動けなくなった。
それでも閉じなかった。
それだけで、今日は十分だと思った。
理想の未来は、
まだ何も近づいていないように見える。
収入も、
自信も、
肩書きも、
今日の私は何も持っていない。
でも、
何もしていなかった頃の私とは、
確実に違う。
あの頃は、
「やらなきゃ」と思いながら、
何もせずに一日が終わっていた。
今日は違う。
たとえ小さくても、
理想と現実の間に、
一本の細い線を引いた。
ここから、
あちら側へ行くつもりだと、
自分にだけ分かる印を残した。
パソコンを閉じるとき、
達成感というほどのものはなかった。
でも、
少しだけ胸の奥が静かだった。
「今日は、ちゃんと選んだ」
そう思えた。
派手な前進じゃない。
誰かに誇れる一日でもない。
それでも、
理想と現実の間で、
今日も私は、立ち止まらなかった。
この小さな作業が、
いつか振り返ったとき、
「始まりの一部」になることを、
今はまだ知らないまま。
ただ、
今日の私は、
昨日より少しだけ、
未来のほうを向いていた。
それで、十分だった。