その日は、本当に何もできなかった。
朝、チェックリストを開いた。
開いただけで、閉じた。
動画を再生しようとして、
再生ボタンの上で、指が止まった。
「今日は、無理かもしれない」
体が重いわけじゃない。
眠いわけでもない。
ただ、心が前に出てこなかった。
理由を探しても、
はっきりしたものは見つからない。
昨日、比べてしまったからか。
先の不安が、また顔を出したからか。
それとも、単純に疲れているだけか。
分からないまま、時間だけが過ぎていった。
時計を見るたび、
胸の奥が、少しずつ沈んでいく。
「今日は、ゼロだな」
そんな言葉が、
頭の中で静かに決まってしまった。
夕方、パソコンを閉じた。
何も進んでいない画面を見続けるのが、
つらくなったから。
夜になって、
部屋の電気をつけたまま、
ベッドに座る。
今日一日を、
なかったことにしたくなる。
でも、そのとき、
ふと思い出した。
「やめない、って決めたんだよね」
進む日もあれば、
進めない日もある。
それでも、
やめない。
私は、もう一度だけ机に戻った。
チェックリストを開く。
今日の項目は、白紙のまま。
その下に、
新しい一行を足した。
「今日は、できなかった」
チェックはつけない。
言い訳もしない。
ただ、事実を書く。
それだけで、
胸の奥の重さが、
少しだけ軽くなった。
何もできなかった日を、
なかったことにしなかった。
それが、この日の
“やり直し”だった。
ベッドに戻り、
電気を消す。
ゼロの日。
それでも、
終わりじゃない。
そう思えた夜は、
静かだった。