その日は、本当に何でもない一日だった。
目覚ましで起きて、身支度をして、働いて、帰ってくる。
特別な出来事も、嬉しいニュースもない。
いつもと同じ流れの中に、私はいた。
それなのに、夜になって部屋の灯りを落とした瞬間、
ふと胸の奥がざわついた。
「……このままで、いいのかな」
誰に聞くでもない問いが、
静かな部屋に落ちて、ゆっくりと広がっていった。
30代。パート。
毎日の生活は、ちゃんと回っている。
食べることにも、住む場所にも困っていない。
「大丈夫だよ」と言われれば、確かにそうかもしれない。
でも、立ち止まった瞬間に思ってしまった。
この先も、同じ一日が、
少しずつ形を変えながら続いていくのだろうか。
私はこれから、どんなふうに歳を重ねていくのだろうか。
理由は、はっきりしていなかった。
誰かに何かを言われたわけでもない。
失敗したわけでも、傷ついたわけでもない。
ただ、静かな時間の中で、
ずっと見ないふりをしてきた気持ちが、
そっと顔を出しただけだった。
周りを見れば、
やりたいことを見つけて進んでいる人もいれば、
迷いなく、安定した道を歩いている人もいる。
比べないようにしているつもりでも、
気づけば比べてしまっていて、
「私は、何も変わっていないな」
そんな言葉が、心の中に浮かんだ。
それでも、その夜ひとつだけ、
はっきりと分かったことがある。
こうして立ち止まり、考えているということは、
私はまだ、自分の人生を諦めていないということだ。
もし本当に、どうでもよかったなら、
こんなふうに悩んだりはしない。
何も感じないまま、
ただ時間だけが流れていくはずだ。
でも私は、確かに思った。
「このままで、いいのかな」と。
それはきっと、
少しでもよくなりたい気持ちがあるから。
自分なりに納得できる生き方を、
まだ探しているから。
今は、答えなんて出ていない。
明日、何かが変わるわけでもない。
それでも、
この気持ちに気づけた今日を、
なかったことにはしたくなかった。
だから私は、こうして言葉に残す。
30代。パート。
特別な肩書きはないし、
胸を張れるほどの自信も、まだない。
それでも、
これからどう生きたいかを考え始めた私は、
ほんの少しだけ、前を向いている気がした。
ゆっくりでいい。
立ち止まりながらでもいい。
この日が、
私にとっての小さなスタートだったと、
いつか思えたらいい。