金. 2月 27th, 2026

ロードマップを保存したあと、私はしばらく画面を閉じられずにいた。

夜の部屋は、昼間よりも静かだった。
換気扇の低い音と、遠くで走る車の音だけが、ゆっくりと時間を進めていく。

机の上には、使いかけのノート。
端が少し折れたペン。
どれも特別なものじゃないのに、今日は妙に現実味があった。

「ここから、始めるんだ」

独り言のように呟いて、私はノートを開いた。
真っ白なページに、ロードマップを書き写していく。

今日やること。
今週やること。
今月は、ここまで。

文字にするたび、頭の中にあった不安が、少しずつ外に出ていくのが分かった。
不安は消えない。でも、形になると、意外と小さかった。

窓の外を見ると、いつの間にか空が暗くなっていた。
街灯がひとつ、またひとつと灯っていく。

私は思い出していた。
これまで何度も「変わりたい」と思ってきたことを。

新しいことを始めるたび、
期待して、頑張ろうとして、
情報に飲み込まれて、
「やっぱり私には無理だ」と結論づけてきたことを。

でも、今日は違った。

全部を理解しようとしていない。
全部を一気にやろうとしていない。
「今日は、ここまででいい」と、自分に許している。

それは、小さな変化だったけれど、
今までの私にはなかった態度だった。

パソコンの画面に、チェックリストが映っている。
完璧じゃない。
むしろ、心許ないほどシンプル。

それでも、そのシンプルさが、今は救いだった。

「進んでいいんだ」

誰かに背中を押されたわけでもない。
でも、確かに道があると知れた。

不思議なことに、
“成功した未来”を想像しているわけでもなかった。

フリーランスになっている自分も、
収入が増えている自分も、
まだ、ぼんやりしている。

それでも――
「明日、続きをやる自分」は、はっきり想像できた。

それで、十分だった。

私はパソコンを閉じ、椅子から立ち上がった。
キッチンでお湯を沸かし、マグカップに注ぐ。
湯気が立ちのぼり、眼鏡が一瞬だけ白く曇った。

その曇りの向こうで、
今日一日の出来事が、静かに落ち着いていく。

迷って、止まって、
それでも戻る場所を見つけた日。

何も劇的には変わっていない。
明日も、きっと不安はある。

でも私は知っている。
もう、闇雲には歩かない。

立ち止まったら、戻ればいい。
分からなくなったら、聞けばいい。
進めない日は、進めないと認めればいい。

それでも、道は消えない。

ベッドに横になり、天井を見つめながら、私は静かに目を閉じた。

「大丈夫。ちゃんと、進んでる」

そう思えた夜は、久しぶりだった。

そしてこの日を境に、
私の副業は「憧れ」ではなく、
「現実として積み重ねていくもの」になった。

派手じゃない。
速くもない。

それでも確かに、
私の足で、一歩ずつ。

この道の先に何があるのかは、まだ分からない。
でも、迷子じゃない。

それだけで、
明日を迎える理由としては、十分だった。

投稿者 minatsu

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