夜になって、部屋の明かりを少し落とした。
昼間の集中が嘘みたいに、頭の中が静かになりすぎていた。
机の上には、今日のチェックリスト。
小さな丸が、いくつか並んでいる。
昨日より、確かに増えている。
それなのに、胸の奥がざわついていた。
「……これで、いいんだっけ」
進んでいる。
少しずつだけど、やっている。
誰かにも確認してもらった。
理屈では、分かっている。
それでも、不安は消えなかった。
パソコンを閉じても、
頭の中では別の画面が勝手に立ち上がる。
もっと早く進んでいる人。
もう仕事を取っている人。
成果を出している人。
比べるつもりはなかった。
見ないようにもしていた。
それなのに、
静かな夜は、どうしても比べてしまう。
「私は、遅いんじゃないか」
「このまま続けて、本当に届くのかな」
進んでいるからこそ、
ゴールがまだ見えないことが、
余計に不安を大きくした。
立ち止まっていた頃は、
諦めれば楽だった。
でも今は、
諦めないと決めている。
その決意が、
不安を連れてくる。
私は椅子から立ち上がり、
窓を開けた。
冷たい夜の空気が、
一気に部屋に流れ込む。
遠くで、誰かのテレビの音。
コンビニの明かり。
変わらない街の夜。
世界は、何も変わっていない。
変わっているのは、私だけだ。
その事実が、
少しだけ心細かった。
机に戻り、
ロードマップをもう一度開く。
先は長い。
空白も多い。
「未定」と書かれた場所が、やけに目立つ。
「全部決めなくていい」
昨日、聞いた言葉が、
また静かに浮かんできた。
私は、未来を心配しすぎていた。
今日やることは、もう終わっているのに。
不安は、
“今”じゃなくて
“まだ来ていない先”からやってくる。
そう気づいた瞬間、
少しだけ呼吸が深くなった。
チェックリストの一番下に、
小さく書き足す。
「不安になっても、戻る」
それはタスクじゃない。
約束だった。
ベッドに横になり、
スマホを伏せる。
誰かの進捗を見なかった夜は、
それだけで、心が静かだった。
進んでいるのに、不安な夜。
それは、
本気で進み始めた証拠なのかもしれない。
そう思えたことで、
私は目を閉じることができた。
明日も、
きっと不安はある。
でも、
今日の私は、ちゃんとやった。
その事実だけを胸に、
静かな夜は、ゆっくりと更けていった。