金. 2月 27th, 2026

その日は、朝から少しだけ気持ちが重かった。
理由は分からない。
ただ、何となく、足元が安定していない感じ。

コーヒーを淹れて、パソコンを開く。
いつもの流れ。
いつものはずの時間。

けれど、無意識に開いてしまったのは、
チェックリストではなく、SNSだった。

画面に流れてくるのは、
「◯ヶ月で達成」
「未経験から月◯万円」
「初案件獲得しました」

胸の奥が、きゅっと縮む。

見なければいい。
分かっているのに、指が止まらない。

昨日までの「できた」が、
音を立てて小さくなっていく。

「私は、何をやっているんだろう」

比べるつもりなんてなかった。
でも、比べないでいられるほど、
強くもなかった。

画面を閉じて、
深く息を吸う。

それでも、
頭の中では数字と結果が回り続ける。

進んでいるはずなのに、
一気に置いていかれた気がした。

そのまま、
机の前で動けなくなった。

以前の私なら、
きっとここで終わっていた。

「やっぱり無理だ」
「向いていない」

そう言って、
そっと離れていく。

でも、その日は違った。

視線が、
机の端に置いたノートに落ちた。

ページの端に書いた、
小さな一文。

「迷ったら、戻る」

あの日の面談で、
もらった言葉。

私は、
SNSを閉じたまま、
チェックリストを開いた。

今日やること。
一つだけでいい。

動画を一本。
メモを数行。

胸の奥は、まだざわついている。
それでも、再生ボタンを押した。

理解できない部分が出てくる。
集中も途切れる。

それでも、
途中でやめなかった。

チェックを一つ、入れる。

その瞬間、
不思議と比べる気持ちが、
少し遠のいた。

比べてしまったのは、
私がダメだからじゃない。
ちゃんと、進みたいと思っているからだ。

そう思えた。

夕方、
チェックリストを閉じる。

成果は、小さい。
誰にも見せない一日。

それでも、
「戻れた」という事実が残った。

遠くへ行かなくていい。
近道を探さなくていい。

私は、
自分の場所に、
ちゃんと戻れた。

夜、
ベッドに横になり、
天井を見る。

比べてしまう日もある。
心が揺れる日もある。

でも、
戻る道を知っている。

それは、
進む力と同じくらい、
大切なことだった。

この日、私は知った。

前に進むとは、
比べないことじゃない。

比べてしまっても、
また自分の道に戻れること。

それができたから、
私はまだ、
この道を歩いていける。

投稿者 minatsu

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